ジャック・スパロウ

ジャック・スパロウジャック・スパロウ(Jack Sparrow)は、『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』(2003年)、『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』(2006年)、そして2007年に公開された『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』の3部作から成る映画、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズに登場する架空の人物で海賊、および同作品中の主人公の名前である。映画では俳優ジョニー・デップが演じている。

ジョニー・デップは、現在に残されている海賊たちの実像を記録した文献以外にも、彼が大ファンであるローリング・ストーンズのギタリスト、キース・リチャーズ(彼はデップの熱烈なリクエストから第3作に出演することとなった)と、アニメ「ルーニー・テューンズ」に登場するスカンクのキャラクター、ペペ・ル・ピューの双方に演技の面で影響を受けたと述べている(ちなみに、1935年の冒険映画『海賊ブラッド』の初期に登場するブラッド船長を演じた、オーストラリアの俳優エロール・フリンの演技にも感化されたとしている)。またデップは文献から「自身の掟に忠実な海賊は、自身の美意識に忠実な現代のロックスターのような」イメージを持っていること[1]、またジャック船長を「性的にあいまいな」感じに好んで演じていたことについても述べている[2]。 デップは当作の演技でアカデミー主演男優賞にノミネートされた。脚本家のテッド・エリオットやテリー・ロシオらは1作目のDVDのコメントで、デップが演じるジャック船長をバックス・バニーやアメリカの喜劇俳優グルーチョ・マルクスと比較している。

キャラクターの個性

船長としての地位
船長という「階級」無しで単に名前だけを呼ばれることを嫌い、名前だけを呼ばれるといちいち「キャプテン(船長)だ。キャプテン・ジャック・スパロウと呼べ」と訂正を求める発言を繰り返すことに象徴されているが、自分こそがブラックパール号の船長だという強い気持ちを持っている。第1作目における彼の大部分の行動は殆どこの目的のみに尽きるし、逆に船長になるためにはどんなことでもする。

ジャックは一度船長となったバルボッサには、自身の従属と自分の海賊としての稼ぎの25%を還元することを申し出ており、それはジャックがバルボッサに彼の側に従うものと確信させるための単なる策略にすぎないはずであったが、それが結果としてジャックに船の指揮権を奪回させた。更にジャックは自由を好み、エリザベスにも「船とは、本当のブラックパール号とは、自由なのだ」と説明している。また彼は第2作目の『デッドマンズ・チェスト』では、ジャックが文字通りブラックパール号に自身の魂を売り正しく船の船長であるのだと確証された。クラーケンに襲われ船員達が船から離れざるを得なくなった時もまだ、ジャックは「ブラックパール号は俺にとってたった一つの船だ」とギブスに告げ、その後も船に居残り最愛の船を置き去りにすることを意図していないように見えたが、これはクラーケンがボートではなくジャックを追っていることを彼自身知っており、エリザベスもクラーケンが何の後を追っているのか確かめていた事実があったためと思われる。

振る舞い
最も明白な特徴と言えば、焦点が定まっていない(または機能障害にも見える)かのように決まり悪そうに激しく動かす手ぶりと、やや酔っぱらっているようなよろめいた動きである。船に乗っているときはいくぶん足下がしっかりしているところを見ると、船のデッキ上で長い時間を過ごしているための副作用として起こる動きなのかもしれない。

彼は実際、島からの脱出を助けてもらった酒類密輸業者と浮かれ騒いで過ごしていたこともあったが、ウィルは劇中、スパロウのふらつきはその前に孤島に置き去りにされて高温の気候と熱射に苦しんだ結果ではないのか、と推測するシーンがある(ギブスは否定しているが)。またスパロウの手振りは、敵を無防備にさせておくための策略のひとつであるとも信じられており、まともに話を聴いているのかわからない酔っぱらいのような態度は、話を不明瞭にする傾向にも繋がっている。

そのほか、ジャックは右の肘と手首の間の前腕に、はっきりと海に沈む太陽の前方を飛ぶスズメのタトゥーを彫っている。これは明らかにノリントンがすぐ識別できると思われる、忌まわしい海賊へのよく知られた認定印である。(ちなみにスズメは英語でSparrow)更に彼は東インド会社によって右の手首にアルファベットのP(Pirates{海賊}の頭文字とされる)の焼き印が押されている。第2作目中にPの焼き印が映っているシーンで、カトラー・ベケット卿は彼とスパロウがある時期においてお互いに「印を付けた」ことがあると触れている。一方でベケット卿の焼き印も同じくアルファベットのPであるらしいものの、どのようにしてジャックがベケット卿に焼き印をつけたのかについては正確に明示されていない。

ジャックの資産
海賊であるジャックは資産として自身の体に常に多数のアイテムを身につけており、彼の三角帽、ピストル、剣、そしてコートをまとめて「彼の資産」として知られている。その中で最も特異なものは彼のコンパスである。

ジャックのコンパスはヴードゥー教の予言者でもあるティア・ダルマと交換して受け取ったもので(2作目で説明されている)、常に北を指す通常のコンパスと異なり、コンパスを持つ人間が最も欲しているものを差す。一般的にこのコンパスは宝物や価値のある品目を指すが、人を指すこともできるほか、どんな人間が持っても機能し、地面の上に置かれ触れられていない間でさえも機能することができる。

このジャックのコンパスは第2作目の初めでは故障しているように思えたが、しかしその後ジャックがウィルを助け出す唯一の方法は「死者(デイヴィ・ジョーンズ)の宝箱」を探し出すことだと説得してエリザベスに持たせると、彼女はウィルを救い出すことしか考えていなかった為うまく機能した。また。後になってエリザベスがコンパスを所持していた際、コンパスはジャックを指したため彼女は動揺しながら「コンパスが壊れている」と不満を言わせることになった。またジャックが地面に置かれたコンパスを見たときエリザベスが砂地に座っていたため、身振りでその場所を移動するよう合図したシーンもある。

ジャックがバルボッサを倒すために使う予定だったピストルの一発を撃った後、彼の帽子は最も愛用のものであるように見えた。ジャックは自身が帽子を保持しているときは常にかぶっており、「ジャックの資産」について話し合うとき彼は常に帽子について特別な言及をする。シーンが喜劇的な変わり目になると、ジャックは2作目の冒頭部で三角帽を無くし、それをそのままにしておけという彼の命令には一同の動きが制止するほど船員を驚かせた。この三角帽はその直後にクラーケンによって食べられてしまう。ジャックは同作品中で映画全体を費やしてちょうどいい代用の帽子を捜しており、特にパブでの乱闘のシーンでは戦闘に没頭していた数多くの人の三角帽を盗んでは試着していた。結局彼は2作目の最後に向かう場面で、自分が飲み込まれる前にクラーケンに吐き出された元の帽子を再び取り戻している。

特色
海賊にはまれながら、スパロウは利他的な性向があることで知られる。彼はよく危険を冒してまで他人を救い出すことがあり、特にウィルとエリザベスには著しくよく見られる。第1作目の脚本では、ジャックの優しさは甘さに通じ、彼の船員が反乱を起こした理由の一つであると示唆している。ジャックが海軍船「インターセプター」上で呪われたアステカの金貨の一つを非暴力的な方法で見つけ出そうと提案した際、バルボッサは「今ならわかるだろう、ジャック。お前はそんな態度だからブラックパール号を失ったのさ。人は死んだようになってる時をうかがいやすいものだ」と言っていた。更にスパロウは「海賊の掟」を重んじる高潔な男として演じられている。彼はまた世の中には「良い」海賊がいるとも信じ、それがビル・ターナーを「靴ひもの」と評価することに繋がっている。

ジャックは自分が「女という生き物の直感」を持つ女好きの男であると思いこんでいる。しかし、彼はみたところでは女性と長期間の関係に傾倒できないようである。ジャックは女性をとりこにする達人として演じられているが、以前の恋人が彼と彼を求める女性に平手打ちで叩く傾向があったようで、口説き落とす女性は彼にとって不快な記憶であるようだ。

スパロウがもっともよく使用するフレーズには、「savvy?(サヴィ?、お分かり?の意)」(デップは「余り連呼するものだから、僕の娘はジャックの本名をキャプテン・ジャック・スパロウ・ザヴィだと思っているよ」とコメントしている)や「bugger(バガ、想定外のことが起きた場合などに用いる)」がある。また彼は「(特定の立場を指揮できる)好都合な瞬間」を待つことにも幾つか言及している。またスパロウがもっとも引き合いに出すセリフは「Why is the rum gone?(なんでラム酒が無くなったんだ?)」である。

またジャックは見たところ真性口臭症に悩まされているようである。彼がノリントンにやや近づいたときはその悪臭で一歩後ろに下がらせ、スワン総督には1作目の最後に猿ぐつわで口を塞がれた(DVD版のコメントで、監督のゴア・ヴァービンスキーはその時のジャックの呼吸が「ロバの肛門内部」に似ていたと述べている)。2作目の「デッドマンズ・チェスト」の中でジャックがエリザベスにロマンチックに接近しようとした時、彼女はお互い違うタイプの人間であると色々なことを指摘し、その中の一つは「身体の衛生」であった。

1作目の「パイレーツ〜」シリーズの映画DVDに収録された脚本家のコメントによれば、スパロウはターナー・バルボッサ・ノリントンと比べ最も才能の無い剣士であり、難解な立場を切り抜けるのに剣術よりも頭の回転に頼っているようである。

前述したようにジョニー・デップは海賊を「現代のロックスター」のようだと述べている。これは自らの美意識に忠実、という以外にもロックスターにまつわる話や伝説が通例スター自身よりも大きいものであるからである。1作目でカットされたシーンの中に、置き去りにされた孤島でエリザベスが最初に島から脱出した話がそれほど冒険的でないと知った後、彼の「他の」話で真実があるかどうか尋ねる場面があった。スパロウは表面上その彼女の遠回しな質問を侮辱したようであったが「真実?」と最初に答え、それから体中にある数多くの傷跡をさらした。これには東インド会社によって右手首につけられたPの焼き印、左前腕に沿ってできた原因不明の巨大な傷跡、そして右側の胸部に二つのマスケット銃の弾丸による外傷が含まれていた。それを見たエリザベスは目に見えて震え、一方のジャックは冷たく皮肉を込めて「真実なんか一つもないね」と結んだ。

スパロウは侮辱する言葉として「eunuch(宦官、去勢された男などの意)」をよく用い、ウィル・ターナーとの争いの間にも剣術の練習に長時間費やす傾向があるターナーは「eunuch」かなどと尋ねるシーンがある。第2作目中でも、原住民族の言葉を真似して彼らに何か喋っている間のセリフに「Eunuchy snip-snip(ユーニッキー・スニップ・スニップ、Eunuch『去勢された男』とsnip-snip『ちょきんちょきん』を掛けているものとも考えられる)」と声を発している。